百地外伝~夢と希望
「夢子、百地、これが俺のじいちゃん、藤林治来(ジライ)」
「はじめまして、あたし、田中夢子です」
あたしは、手を前に合わせ、大きく頭を垂れた。
「百地忍です」
そう挨拶した百地は、身動ぎもせずじっと長の顔を見つめていた。
「お前が、心波の孫か」
一瞬、二人の間に緊張が走った。
ように感じたのは、あたしの錯覚だったのかな?
「で、君が風ちゃんの娘さんじゃね?
息子夫婦や翔から、話だけは聞いとったが、ほんに可愛いのう、めんこい娘じゃ」
あたしに向かって、にっこりと笑ったその笑顔には、先ほど感じた厳しい面影は微塵もなかった。
「迎えが遅れてすまんかったのう。
疾風(ハヤテ)が途中で機嫌を悪うしてのう、どうにもこうにも動かんようなってしもうて。
仕方なくわしだけ歩いて来たって訳じゃ」
「あの、疾風さんて?」
「あぁ、じいちゃんの馬」
翔が突き放したように言い放った。
「うまぁ~」
(今の、この世に、馬でお迎えですかぁ~)
あたしは思わず叫んでいた。