百地外伝~夢と希望
「久しぶりに荷車つけたが、それが気に入らんかったんじゃろうて」
駅から国道六十三号線を歩いて小一時間ほど下ったところに、荷車を付けた馬がじっと待っているのが見えた。
疾風はあたし達の姿に気付くやいなや、足を踏み鳴らして大きく嘶く。
(まだ機嫌が悪いのかな?)
「まだ、気ぃは収まらんようじゃのう……
さて、さて、どうしたものかのう」
長が大きくため息をついた。
「いや、ちょっと待って下さい……」
何を思ったのか、百地は疾風の前に進み出ると、優しくその鬣を撫で始めた。
暫くは首を縦に振りながら嘶いていた疾風が、次第に落ち着きを取り戻していく。
百地はその鬣を撫でる手を、次第に首から肩、そして背中へと移動させた。
百地の顔が上がり、その目が長を捕らえた。
長が無言のまま、百地と疾風の方へ歩いていった。
「翔、ちょっくら、てつどうてくれんかのう」
長の声が翔を呼んだ。