百地外伝~夢と希望



「どう、どう……」



長の大きな声に、はっと気付くと、そこは鬱蒼と茂る竹林の中。

長の手綱が強く引かれ、荷馬車が止まった。


「さぁ、到着じゃ」


老人とは思えない素早さで、御者席から飛び降りた長が、荷車で眠っている翔と百地の頭をポン、ポンと叩いた。


「うぅん……」


と伸びをして、翔が目を覚ました。

百地は、静かに目を開けると、その顔をあたしに真っ直ぐに向けた。

その瞳は、あたしに何かを訴えようとしていた。

多分、百地は眠ってはいなかった。

長とあたしのやり取りを聞いていたに違いない。

あたしがこんなにも動揺しているというのに、百地は、あえてそのことについては言葉にしなかった。

あたしにだって、自分から、それを口にする勇気もない。

だが、その瞳を見て、あたしは理解した。




百地が長の言葉を正直に受け取り、あたしから距離を置こうとしているのかもしれないと。
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