百地外伝~夢と希望
ヒュゥルル……ザ、ピュゥ……
ガウゥルル……ザ、パァン……
突然、また耳元であの風の音が吹き荒れた。
あたしは思わず耳を押さえ、身を屈めた。
「夢子、夢子、どうした?」
あたしを気遣う翔の声も、優しい温もりも、この痛みからあたしを救うことはできない。
風の耳鳴りはどんどんと威力を増して、身体の中を付き抜けていく。
『しのぶ……』
あたしは、縋るような気持ちで百地の名を呼んだ。
瞬間、風の耳鳴りが止んだ。
耳を押さえるあたしの手の上から、一回り大きな百地の手が、その痛みを拭い去ってくれたから……
「じっちゃん、エネルギー強すぎだって……」
繋がった手の温もりが、あたしの不安も同時に拭い去っていった。