百地外伝~夢と希望
『良く来た……、わしはここに居る……』
はっきりと聞こえた呼び声に、思わず顔を上げ、山を見上げた。
裏山の更に上、里を見下ろす張り出た大岩の上に、藤林の長と同じような白髪ロンゲ、髭モジャの、まるで仙人のような風貌の一人の老人が立っていた。
「あれが、百地心波?」
そう呟いたのは、翔だった。
みんなの視線に気付いたからか、己の存在を知らせた満足感からか、心波の姿は、瞬きする間に消えていた。
何?
今のはどういう意味?
あたし達にどうしろって言うの?
湧き上がる憤り。
もう、これだから年寄りは自分善がりで困る。
そんな暴言を呟きながら、あたしはゆっくりと耳から手を離した。
……繋いだ手はそのままに。