百地外伝~夢と希望
「相変わらず、お前の心は読めんの……」
諦めたように、心波が呟いた。
「話せば、事足りることじゃろうて。
わしの心を読んだとて何がおまえに有利になるというのじゃ?」
「確かに……、わしの癖じゃ、許せ」
二人は顔を見合わせると、ガハハハと大声をたてて笑った。
さっきのあの緊張は何だったのか。
あたしは呆気にとられて二人の様子を見つめていた。
「で、お前が五十五年ぶりに里に降りてきた理由は、この二人にある訳じゃな」
「いかにも」
「夢子は戸隠の跡取りじゃ、そしてこの忍は……」
「わしの孫じゃ。
治来、もう一つ付け加えるなら、夢子は『懍』の生まれ代わりじゃ」
「むっ、それはまことか?」
長の視線があたしに注がれた。
「夢子に問うてみるがよい」
「夢子、まことか?」
「生まれ代わりって、そんなことあたしに分かるわけありません!
あたしは、ただ、懍おばさまの魂の記憶を感じることができるってだけです!」
あたしは、はっきり言って動揺していた。