百地外伝~夢と希望
「懍はわしに泣いて縋った。
この惨事をどうか止めて欲しいと。
そして、この夢に囚われ、何度も何度もこの夢を見続けた。
懍は、いつかこの夢が、夢で終わることを願い続けておったんじゃ」
「でも、原爆は落とされた……」
「そう、あの年の八月、わしらの努力も空しく、原爆は落とされた。
せめて、あと一週間、戦争終結が早まっていれば、懍も……」
「で、懍おばさまは、それからどうなったんですか?」
あたしの質問に、心波は少し戸惑ったように口をつぐんだ。
その目には深い悲しみが溢れていた。
が、その口が震えるように開かれた。
「懍は……、懍は狂うてしまったんじゃ……
夢に囚われ、そこから出てくることができんようになってしもうたのじゃ」
「……」
あたしは言葉を失った。