百地外伝~夢と希望

「驚くには及ばぬ。

これからの未来、『最先端科学』に精通せずして、どう戦っていけると言うのじゃ?

一般的な物理、科学、医学に加えて、量子物理学、宇宙工学、遺伝子工学、ロボット工学、バイオテクノロジー、ありとあらゆる最先端科学技術に精通する必要がある。

なに、昔の繋がりで、人材を集めるのはなんとかなるじゃろうて、知波もいるでのう」


翔の後を続けて語り出した心波の口からは、あたしが到底理解できない難しい言葉の羅列が飛び出した。


「知波は『他心通の術』を成す資質に恵まれてはおらんかったが、その代わり、里で新しい時代にどっぷり触れているでのう。

まぁ、宇宙工学は知波に任すとして、息子の為じゃて、他にも、一肌も二肌も脱いでもらわねばのう」

心波の声が、幾分、温かみを帯びているように感じた。

「わしと治来と魁は、昔から根来の『三羽烏』と呼ばれておっての、その結束は石よりも固いのじゃ。

わしらが揃うて、出来ないことはない。

じゃが、夢子と忍の対の件はどうするかのう、わしらの二の舞にせん為に必要な手立てとは……」


そう言いかけて、心波は長の方に目をやった。

一族の歴史とその知恵の全てを治める藤林の長には、その手立てが判っているとでも言いたげに……


「ほぅ、ほぅ、ほぅ……」


心波が呻くように笑い出した。


「流石じゃのう、治来。お前の心は全く読めん。

お前とは、言葉を介して繋がるしかないという訳じゃのう」


「それが誠の道なのじゃ、心波。お前は己を過信し過ぎる。

人はのう、口にした言葉によって、己を縛るということもあるのじゃ。

心を読むことで、人を読んだと思うのは過信じゃて」


「そうよのう、そうかもしれぬ。わしは言葉のもつ真の意味を、蔑ろにしていたやも知れぬな……」


心波の顔が苦悩に歪んだ。
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