百地外伝~夢と希望
「忍、お前もこれから、わしと同じことで苦しむことになるのじゃ。
他人の心が見えるとはのう、己が崩壊することに他ならぬ。
境界がのうなってしまうのじゃ。
そこから得るものも多い。
だがのう、治来の言うたことも、また真実じゃ。
人は口にした言葉によって己を縛る。
言葉は誓約であり、意志である。
人間とはのう、不完全な生き物なんじゃ。
心と言葉には矛盾があり嘘もある。それを見抜ける術が『他心通の術』の極意といえる。
生半可な気持ちで当たれば、命取りじゃ。
己を見失うてしまうでのう」
「希望……」
あたしは思わず、心に浮かんだ言葉を口にした。
「だから、希望が必要なんですね」
「夢子、流石、お前は巫女じゃ……
いかにも、その希望を示すのが巫女の真の役目なのじゃ。
夢子、お前は夢を写す鏡であれ、鏡は希望を映すであろう……」
祖父、魁が厳かに言葉を繋いだ。
あたしは、その言葉を、戒めとして深く心に刻み込こんだ。