百地外伝~夢と希望
「これが根来。
この谷間に僅か数十件、今は全部合わせても二百人くらいの人間しか住んでない。
俺はここで生まれて、三歳までここで育った。
今は里で暮らしてるけど、盆と正月には根来に帰って、じいちゃんから忍術三活法を少しずつ習って、自分の使命を少しずつ確信して、いつかはまた、ここに戻ってくるって思ってる」
「翔……」
翔がそんなこと考えていたなんて、あたし知らなかったよ。
「でも、夢子や百地は、俺とは違う。
今まで何も知らずに生きてきて、自分の中で育ち始めた能力に目覚めたとたん、こんな根来のやっかいな重荷を背負わされるなんて、戸惑わないほうが可笑しいと思う」
「確かに、そうとも言えるが、でも、この俺の能力は、恐らく俺一人では、どうにも持て余すのは目に見えてる」
百地は何処か吹っ切れたようにそう言った。
「それに、俺も小さいころ親父から、忍術三活法ってやつを少しは習ってると思う。
親父が俺をかまってくれてたのは小学校へ上がる前までだから、まぁ、そのサワリってとこだと思うけど。
だから、忍術に対する違和感はないよ」