百地外伝~夢と希望
『そうは言ってもなぁ、自覚するのと、実際に期待されるのとじゃ雲泥の差だよな』
後ろからふいに、あたしの頭をくしゃっと撫でた百地は、あたしだけに呟いた。
『あたしのママは、ここから逃げた。そして、あたしはここへ戻ろうとしている。それがどう言うことか、わかる?』
『お前が母親を捨てる、ってことか』
『そう、多分、そうなる。ママは、少なくともそう思ってる』
『切り離す必要はないんじゃない』
『えっ』
『だって、お前の母親の中にも、根来の血が流れてるんだろ?
長達は、恐らくそれを、戸隠風が根来へ戻って来るのを待っている。
俺、風さんが、あんなにも根来を嫌っていた理由が何となく分かった気がするよ。
風さんは分かってる、お前を通じて、根来の血が騒ぎ出すのを止められないんだ』
『あたし、あたし何か勘違いしてる?
ママは根来を嫌ってるって、ずっと思ってた。
あたしが根来へ戻るのを、あたしを手放す覚悟で送り出したんだと……』
『彼女は全て分かってる。
お前を手放す覚悟、って言うのは正解。
でも、お前や根来と縁を切るって事とは違う。
多分、彼女は今までの関わり方を全て手放す覚悟をしたってこと』
『関わり方……』
『母としての役目は終えたってこと』
百地の声は確信に満ちていた。