百地外伝~夢と希望
戸隠の家は、藤林の家と根来の谷を挟んだ丁度反対側にあった。
古の昔、この地に居を構えた一族は、砦としての観点から、長を司る藤林家と巫女を祭る戸隠家を谷を挟む高台に据えたのだ。
窮地の折には、川を堰き止め、谷を水に沈め、追ってを絶つと言う。
ただ、藤林の家が竹林に囲まれ、殆ど隠れたようにひっそりと建つのに対し、戸隠の家は丘にそびえる御殿のような派手な佇まいだった。
これでは目立ち過ぎて、攻め込んで来いと言わんばかり。
「なんでこんなに派手なの……」
あたしは、戸隠の家を目の前にして、思わず息を呑んだ。