百地外伝~夢と希望
「ほら、巫女はさ、神様からよく見えるとこにいないといけないから……」
翔が、尤もらしくあたしを慰めた。
「根来で唯一の憩いの場所だしさ。
祭りの時とかも、みんなここに集まるし、そういう場所なんだよ戸隠の家はさ」
入り口にそびえ立つ、真っ赤な鳥居。
そこから先は白い玉砂利が敷き詰められた異空間。
大きな庇の張り出た昔風の建物の周りには、全て回廊が回っている。
もしかして、これは家ではなく、社(ヤシロ)?
戸隠の家は神社なの?
巫女を祭る神社ってこと?
「夢子、あれ……」
百地の驚く声に、その指差す方向に目を向けた。
「うそ……」
そこに映ったのは、白装束に身を包んだママの姿。
いつもは結い上げている長い髪を腰まで垂らして、御殿の回廊を摺り足で颯爽と進んでくるママの姿だった。