百地外伝~夢と希望



「ほら、巫女はさ、神様からよく見えるとこにいないといけないから……」



翔が、尤もらしくあたしを慰めた。


「根来で唯一の憩いの場所だしさ。

祭りの時とかも、みんなここに集まるし、そういう場所なんだよ戸隠の家はさ」


入り口にそびえ立つ、真っ赤な鳥居。

そこから先は白い玉砂利が敷き詰められた異空間。

大きな庇の張り出た昔風の建物の周りには、全て回廊が回っている。


もしかして、これは家ではなく、社(ヤシロ)?

戸隠の家は神社なの?

巫女を祭る神社ってこと?



「夢子、あれ……」



百地の驚く声に、その指差す方向に目を向けた。



「うそ……」



そこに映ったのは、白装束に身を包んだママの姿。

いつもは結い上げている長い髪を腰まで垂らして、御殿の回廊を摺り足で颯爽と進んでくるママの姿だった。
< 234 / 328 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop