百地外伝~夢と希望


身構える暇もないほどの一瞬の出来事だった。

通り過ぎたのは、身体を貫く冷たい感触。




〈〈バァァン〉〉




後ろの壁に、放たれた矢が深く突き刺った。





〈〈うぉぉぉ…〉〉





湧き上がる歓声。

響動めく群衆。


みんな何に感激しているんだろう?

放たれた矢に?

それとも射抜かれたあたし達に?



『この者たちは対と認められた……』



群集に向かってそう宣言した声の主は、おじい様、戸隠魁。



そう、これは呪いを解く儀式。

あたし達二人が神に認められた対であることの証。

彼は流れるような動作でゆっくりと振り向き、あたし達の方へと近づいて来た。
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