百地外伝~夢と希望
魁は、厳かにあたしの右腕と百地の左腕を持ち上げ、十字に重ねると、その二本の腕を懐から取り出した赤い紐で固く結んだ。
結ばれた腕から、あたしの血が百地へ向かって流れ込む。
まるで、着物に描かれた赤い文様のように、渦を巻いて流れ込む。
それは錯覚だと解っていた。
こんなこと現実にありえない。
でも、その感覚はあまりにリアルで、まるで赤い文様がその現実を錯覚だと思わせるための覆いのようにも思えた。
混じり合ったあたしと百地の血が、今度はあたしに向かって流れ込み始めた。
凄まじいほどの衝撃があたしの身体を付き抜けた。
血管という血管が、今にも弾けて壊れそうだ……
これが、巫女の呪いを解く儀式なの?
あたしと忍が真の対であることは、証明されたのだろうか……
ふと、緊張の糸が緩んだ瞬間、あたしを包み込むように暖かい視線を群衆の中に見つけた。
その風貌は確かに老いてはいたが、瞳の奥に潜む光は昔のままだった。
嗚呼……、心波……
あたしは全身を突き抜ける郷愁の念に耐え切れず、その場で意識を失った。