百地外伝~夢と希望
山の彼方に沈む夕日を眺めながら、あたしは隣りに寄り添う青年の肩に頭をあずけた。
谷から吹き上げる規則正しい風が、二人の後れ毛を揺すっていった。
「心波……」
名を呼ぶだけで、彼にあたしの気持ちが全て伝わることを知っていた。
それでも、伝えなくてはならない言葉がある。
「お願い、あたしを妻にして」
願ってはならない望みだということは百も承知だった。
でも、戦いを前にして、あたしは幼い時から思い続けたこの青年を一人旅立たせる訳にはいかなかった。
あたしの希望が彼を救うというのなら、その全てをかけても彼を守りたかった。
何より、側にいたかった。
「リン、俺とて同じ想いだ。だが、それは叶わぬことよ」
「いくじなしっ!」
「リン、俺を困らせるな」
あたしは震える彼の手をとり、その手を自分の懐に差し入れた。
大きく膨らんだ乳房は、もう誰のものになってもおかしくない程に熟れていた。
彼の戸惑う様が可笑しくもあった。
こんな風に男と女が交わることなど、村では極々普通のことなのだ。
あたしが巫女である、という一点をのぞけば……