百地外伝~夢と希望
「紫苑先輩、僕の探偵小説のタイトル下のこの『その一』ってのは、連載を匂わせてると考えていいんでしょうか?」
「そう、いいと思うんだけど? あたしはそのつもりだよ。
卒業までにはもう一号は出したいし、ユタと夢子は来年も再来年もあるんだし……」
「そうですよね、うん、な、夢子、やっぱり先輩は良いこと言うよな」
ユタは頬を赤らめて嬉しそうに呟いた。
「中表紙にあたしの詩ってのが、ちょっと……」
「だって、夢子、一つしか詩出してくれないんだもの」
「だって……」
だって、詩って、自分の心の中を見せるようなものじゃない。
それに、あたしの詩の大部分は夢に見た光景を詠ったものが多いし、人に見せる類のものじゃない。
あたしの記憶を留めておくための記録のようなものなのだ。
「でも、この『夢を追いかける風』って詩はいいと思うよ。
なんか青春って感じて、あたし達の今の気持ちを表してる気がする」