百地外伝~夢と希望
「藤林さんのお家は美容院なのね」
ん?
この声は紫苑先輩?
あたし達の後ろで声が聞こえた。
「で、どちらなの? 今度お世話になりたいわ」
「……」
しばしの沈黙。
「おい、藤林、お前んち何処かってさ」
この声はユタ?
「三丁目の『ウイング』っていう美容室」
翔のぶっきら棒な声が聞こえた。
「でも、紫苑先輩、そんなロングでどこ切るんですか?」
「いろいろよ、ちょっと揃えてもらいたいし、トリートメントもね」
「ふぅ~ん」
「お父様も、お母様も美容師さんなの?」
「それが何か?」
「どちらにお願いするべきかしら……」
「夢子は母さんに切って貰ってるけど、母さんは出張カットで店に居ないこと多いし、保障できないっす」
「そう、仕方ないわね、でも兎に角、今度の日曜、お邪魔するわ」
「はぁ」
「一時に予約お願いしてね。で、その後お茶でも、どうかしら?」
「はぁ?」
とうとう翔の声が裏返った。
「ゆっくりお話したいなぁって思って」
紫苑先輩、積極的ですね!