百地外伝~夢と希望
日曜日、翔の家の二階は、何故か楽しげな声が響いていた。
「このシュークリームうめぇ」
と、シュークリームを頬張り、声を上げているのは翔。
「佐藤が朝から焼いてくれたの。皆さんに宜しくって」
紫苑先輩は、そんな翔を嬉しそうに見つめていた。
「佐藤さんて、なんでも出来るんですね」ユタが感心して頷いている。
「あら、彼は一流の執事ですもの、当然よ」
「そういうもんですかね」
「そうよ、彼の辞書に不可能はないわ。
それにしても、藤林さんは何で教えるだけなの?
彼女、夢子に付きっ切りじゃない?」
紫苑先輩が、不満そうにあたしを睨んだ。
「紫苑先輩、翔は、一度読んだら全てを記憶する天才なんです。
テストもいつも満点だし。だから、試験勉強なんて翔には必要ないの。
切羽詰まってるのはあたしだけなんです」
あたしはため息混じりに呟いた。
「夢子、余計なこと言うなよ……」
翔があたしを恐い目で睨んだ。
だって……、ほんとのことだもん。
「まぁ、素敵。やっぱり、あたしの思った通り」
翔を熱い瞳で見つめる紫苑先輩を、ユタと百地が呆れた顔で見つめていた。
ごめん、翔、ますます紫苑先輩に気に入られちゃったみたいだね……