百地外伝~夢と希望
「母さん、で、どうだった? 博君って、どんな子?」
「何? あなた達、それが聞きたくて待ち構えてたってわけ?
本人に直接聞けばいいじゃない」
「そういうわけにはいかないんだよ、いろいろね……」
「もしかして博君の足のこと?」
「うん、まぁ、そんなとこ」
翔が伏し目がちに言葉を濁した。
「博君、五歳の時に交通事故に会って、脊髄を傷めて、歩けなくなったって聞いたわ。
でも、そんな不自由を感じさせないくらい、明るくていい子なの。
髪切ってる間も、ずっと、あたしに話かけてくれて、お母様の作った美味しいお菓子の話だとか、昨日読んだ面白い本の話だとか、尊敬するお兄様の話だとか……
毎日がとっても楽しいんだって、笑って話してくれるの……」
博君の様子を語る翔のお母さまの声が、段々と詰まっていった。
聞いてるあたしの胸もキュウッと締め付けられてくる。
「本当は、歩けなくて、外にも出れなくて、学校にも行けなくて、友達もいなくて、どんなにか不満を一杯言いたいでしょうにね……」
おば様、ちょっぴり涙声だ。
「それが『百地忍』の弟……」
あたしは、そっぽを向いてあたしの視線をよける翔をじっと見つめた。