百地外伝~夢と希望
その晩、あたしは夢を見た。
そこはどこか、公園みたいな広場。
周りは濃い緑に覆われて、微かに甘い花の香りが漂っていた。
沈丁花の香り?
明るい日差しの中、小学生くらいの男の子が、輝くような笑顔でゆっくりとこっちへ向かって歩いてきて、「しぃにいちゃん……」って抱きついてきた。
うぅん、あたしにじゃない。
あたしの隣りに立つ『百地忍』に。
忍の目には、涙が光ってる?
何故かあたしはその場面に立ち会い、とっても満ち足りた気持ちで二人の様子を見ていた……
嬉しいけれど、不思議な気分だった。
だって、経過を通り越して、いきなり見た結果。
これは、未来にかける希望?
博君が歩けるようになるってことかな?
でも、何であたしがそんな夢を見るんだろう?
昨日のおば様の話で、博君のことが気に掛かっていたからかな?
確か『しぃにいちゃん……』とか、呼んでたよね、博君。