百地外伝~夢と希望
「おはよ……」
欠伸をしながら、あたしはアパートの階段をゆっくりと降りた。
「どうしたぁ、夢子? また変な夢見た?」
翔が心配そうな顔であたしを覗き込む。
「何でわかるの?」
「だって、目赤いし……、なんか複雑そうな顔してるし……」
「そう、夢見たの。百地の弟、博君の夢」
「マジ?」
「博君、多分歩けるようになる。おじ様に伝えておいて」
「まぁ、それなら良かったじゃん」
胡散臭い忍術の効果について、翔がいい思いを抱いていないのはいつものこと。
それには幾つかの失敗が関係していた。
でも、翔だって全てを頭から否定してるわけじゃない。
上手くいくことがわかっているなら、それはそれで喜ぶべきことだものね。
「まぁね、でもなんか複雑な気分。これって予知夢? なのかな?」
「う~ん、夢子は百地の希望、だからじゃない?」
(えぇ~っ、そういう希望って、あり?)
それだけ、博君の足のことは、百地にとって重要なことなのだと悟った。