百地外伝~夢と希望
「俺と博は、母親が違うんだ」
「えっ?」
あたしは思わず、百地の顔を覗き込んだ。
「百地のお母さん、亡くなったの?」
「俺の産みの母は、根来の出身で、親父が山を降りたとき後を追ってきた親父の幼馴染み。
でも彼女は俺を産むとすぐ、死んじまった」
「じゃあ、忍はお母さんの顔……」
「顔どころか、全く何も覚えちゃいないよ。
その後、俺の世話するってことでやって来たのが、今の母親。
俺にとっちゃ、彼女が母さんって呼べる唯一の人だな。
そもそも、母さんは俺の産みの母の妹なんだ。
だから、母さんは俺のことも、後から生まれた自分の子である博のことも、わけ隔てなく可愛がって育ててくれた。
感謝してるよ」
『感謝してるよ』
何故か、その言葉の中にも、百地の苦しみが潜んでいるように聞こえた。