百地外伝~夢と希望



「忍……」



あたしは、もうそれだけ聞けば十分だった。

百地の苦しみが、ひしひしと伝わってきた。


「俺を追いかけて必死に走ってる博に、信号なんて見える訳なかったんだ。

博が事故に会ったのは俺のせいだ……

奇跡的に命は助かった。

けど、腎臓が二つとも駄目になって、脊髄の損傷で歩けなくなった。

もし、ホントに博が歩けるようになるなら、俺、どんなことでもする。

博を元の身体にもどしてやれるなら……」



百地の頬を涙が伝った。



あたしは、自然とその頬に手を伸ばし、その涙をぬぐった。


その瞬間、あたしの手首は強い力で掴まれていた。


一瞬のことで何が起こったのかわからない。

あたしは、強い力で引き寄せられ、百地の腕の中にいた。



「夢子……」



百地のかすれた声が耳元で聞こえた。
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