百地外伝~夢と希望
「で、親父、直りそうなのか?」
おじ様が戻るなり、翔が詰め寄って問いただした。
「確かに、指先の感覚は少しだけ残ってるようだ。けどな、本当に、ほんの僅かなんだ」
「でも、夢子が……」
「希望がないとは言わない。が、恐らく時間がかかる」
「どれくらい?」
「うぅん、はっきりとは答えられないな」
「そんなこともわかんねぇのかよ……」
翔の苛立った声が宙に浮いた。
「翔、そんなに焦んなくてもいいよ。時間がかかっても、治る見込みがあるっていうおじ様の言葉で十分だよ」
あたしは、そう言って、百地の顔を覗きこんだ。
「あぁ、治る希望があるってだけで十分だ。俺はそのためだったら何だってするから」
百地の声はしっかりと、この事実を受け止めていた。