百地外伝~夢と希望


百地の決意に頷いて、おじ様がこれからの治療について説明を始めた。


「まずは、マッサージと温熱療法で感覚を取り戻す訓練だ」

「温熱療法って何さ?」

「簡単に言うと、患部を温めて細胞を活性化させる治療方法だ」

「風呂入ったりとか?」

「まぁ、そうだな。

昔から『湯治』と言って、足腰痛めた老人が温泉に行くだろ? あれだ。

だが、博君の場合は、足の感覚を呼び覚ますために行う訳だから、私が考えるに、温めた後、急に冷やして、その感覚の差を徐々に掴んでいく訓練が有効だな」

「で、肝心の脊椎の方はどうだったの?」

おば様が尋ねた。

「多少の変形が見られる。

下肢へつながる神経系にも断裂が見られる。

ある程度は整体術で元に戻せるが、断裂した部分の再生は整体術では如何ともし難い。

だが、この部分が繋がらないことには、足先くらいは動かせても、自分の足で歩くことはままならいだろう」


「そうね、神経系の再生には確か……」




「秘薬がいる」




おじ様は、強い確信に満ちた強い口調でそう言った。

「何?それ?」

翔の呆れた顔を横から眺め、あたしは根来の秘密へと導かれる、不思議な快感を感じていた。
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