百地外伝~夢と希望

「藤林家に代々伝わる秘薬というのがあってな……

動かなくなった手足を動かす秘伝の薬、〈神通丸〉だ。

戦国の世には常備され、使われていたという話だが……」


「その薬で治るっていうのか?」


「薬と言っても、伝術されているだけの未知の薬だ。

少なくともこの三百年の間、作られたことがない。

誰もその効能を経験したことがないんだ」


「一から作る? 作れるわけ?」


「私にとっても初めてのことだ。

根来に戻って、経典を紐解いてみないと、〈神通丸〉が調合可能かどうかも判らない」


「ちょっと待ってください。

その薬の名は<しんつうがん>と言うんですよね?」


今まで黙っておじ様の話を聞いていた百地が、何やら難しい顔をして話しに割り込んできた。


「いや、今年の夏、根来へ行った時、ほら、あの最初の宴会の夜、藤林の長と俺のじいさんが<しんつうがん>の話をしているのを聞いたように思うんです」





「それは本当か?」





おじ様が、興味深深という顔で百地の話に食いついてきた。
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