百地外伝~夢と希望
「何でも、<しんつうがん>の製法は秘伝中の秘伝で、代々口述で伝授されてきたものなのに、ある時、心波が長の頭の中からそれをかすめ取ったとか」
「なるほど、で」
「それを機に、長は、心波に会う時は閉心を心がけているとか」
「で、心波はその製法を知ってどうしたのかな」
「自分で試したと言っていました」
「ほう……」
「心波の右腕には、腕を一周するくらいの大きな切り傷があって、その治療をする時に試してみたと」
「戦時中に受けた傷だな」
「<しんつうがん>の効き目は大した物だと、右腕を大きく動かして自慢していました」
「なるほど、興味深い話だ。
少なくとも、近々に試した者がいる。
幻の薬ではないわけだ」