百地外伝~夢と希望
「あたしは、ぜんぜん覚えてないや……」
あたしは、なんか薄らぼんやり霞んだ根来の記憶にため息をついた。
「俺は、じいちゃんのことが気になって、一言でも聞き漏らすまいと必死だったから」
百地があたしの不安を察したように、声をかけてくれた。
「あぁ、聞いた、俺も確かに聞いた。<神通丸>の話だろ」
翔が、観念したように口を開いた。
「ついでに、じっちゃんに製法も聞いた。
何でも、ひかるのはらにいる『光るミミズ』と『トカゲの尻尾』でつくるんだそうだ。
死ぬほど苦い薬だってよ」
「翔、なんで……」
「俺だって、人並みに好奇心はある。
藤林家の秘伝中の秘伝、口伝えにしか知ることのできない秘薬とくりゃ、どんなものか知りたいさ。
それに俺は藤林家の跡取りだし、正統な聞く権利もあるわけだし。
あの後、長にこっそり聞いたんだ」
「お前に跡取りの自覚があって、父さんは嬉しいぞ……」
おじ様は、ちょっとずれたところで翔に感心していた。