百地外伝~夢と希望
「兎に角、<神通丸>と温熱療法で、博君の足は治るってことだね」
「まぁ、そういうことかな」
「良かったぁ~」
あたしは、やっと肩の力が抜けた気がした。
「正月には根来に帰るし、その時に詳しい製法と処方を長に聞いて、準備をしないとな」
おじ様の語気に言葉に力がこもる。
「そっか……、もうすぐ、今年も終わりだもんね」
根来に帰る。
そうだよ、お正月には帰る、っておじい様と約束したものね。
「俺も根来に行くし」
百地の声に、あたしは思わず振り向いた。
「じいさんに呼ばれてるんで、多分、俺は山に篭ると思うけど」
「正月まで修行かよ?」
「じいさんのことだから、俺にもわかんねぇ」
あたし達三人は、そろって顔を見合わせた。
「まぁまぁ、心波も長に呼ばれれば、里に降りて来るだろう」
「そんなもんかよ」
「そうだよ、お正月だもの、山篭りで修行なんてやり過ぎだよ……」
「なんだか楽しくなりそうだな。今年は、『三羽烏の舞』が見られるか……」
と、おじ様が小さな声で呟いた。