百地外伝~夢と希望
「そういう意味じゃないよ、夢子ちゃん」
あたしの戸惑いを打ち消すように、知波さんはきっぱりと否定した。
「上手く言えないけど、運命には逆らえない、って諦めにも似た気持ちかな。
僕たちは小さい頃から、根来に振り回されて育ってきた。だからこそ、そこから逃れたいと強く思った気持ちも嘘じゃないんだ。
実際、今まで逃げてきた。
そしてまた、戻ろうとしている」
「親父が爺ちゃんを嫌っているのはわかってる。
でも、俺は爺ちゃんのこと嫌いじゃない。
っていうより、信頼してる。俺の今を一番わかってくれる人だから」
「忍にこんな運命が待っているとはな……
お前が『他心通の術』の後継者になるとは……
だが、誤解しないで欲しい。父さんは百地心波を嫌っている訳じゃない。
親としての心波には、確かに反感を抱いてはいるが、忍者としての彼のことは尊敬している。
いや、畏れている、といのが本音だろうか……
彼に誤魔化しは通用しない。
彼の前では誰もが身も心も裸にされる。
それがたとえわが子であろうとも……」
「それが何だっていうんだ!
全てを知らされることの方が、その何倍もつらいこともある」
嗚呼、だから心波は人を遠ざけた。
一人、山に篭って世を捨てたんだ……
あたしは、百地の言葉に胸がつまった。