百地外伝~夢と希望
「夢子ちゃんは、無邪気じゃのう」
長が目を細めて笑った。
「三人が揃うのも、これが最後かもしれんでのう、頑張るか……」
心波が、ガハハと笑った。
「今年の正月は賑やかじゃ」
と、お爺様が頷いた。
まぁ、みんな楽しそうだから良しとしよう。
これから根来で起きる出来事に、少しの不安もないかって言えば嘘になる。
あたしは、このまま正気でいられるのだろうか?
思わず手を、きつく握り締めていた。
『夢子、大丈夫、俺がいる。夢子の側にいつもいるから……』
振り向くと、あたしを優しく見つめる百地がいた。
「さぁ、さぁ、みな長旅で疲れたじゃろ、中に入って休むとええ」
お爺様の掛け声に、みながそれぞれ動き出した。
「そうね、冷えてきたし、上がりましょう」
二度目とはいえ、殆ど記憶がとぎれて思い出せない。
あたしは戸隠御殿の中へと、恐る恐る足を踏み入れた。