百地外伝~夢と希望



それから、大晦日まで、楽しい毎日が続いた。



大きなはたきを持ってスス払いをしたり、落ち葉を掃いて焼き芋をしたり、畑に行って収穫したり、おせち料理を作ったり。

朝、日が昇ってから、夕、日が落ちるまで、あたしは遅れて根来にやって来た翔と百地、そして戸隠の家の人々と一緒に一生懸命働いた。

戸隠御殿には電気が来てないから、夜は蝋燭かランプの明かり。

テレビを観ることも、本を読むことも叶わない。

都会育ちのあたし達には、そんな生活が珍しく新鮮だった。

夕食後、長とお爺様は囲炉裏を囲んで酒を酌み交し、昔話にはなが咲いた。

ママの笑い声、翔と百地と過ごす静かな時間、そんな全てのものが心地良く、何故か自然だった。




でも、ひとつ気がかりなこと。

その中には、心波と知波さんの姿がなかったんだ……
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