百地外伝~夢と希望
『心波』
あたしは舞台の上で動きを止め、心波に向かって手を差し伸べた。
『心波、懍はあなたを愛していました。
たとえ対の者でなかろうと、その愛に偽りはありませんでした。
だから、自分を責めないで。
どうか、わたしを忘れないで、わたしはあなたと出会えて幸せでした』
あたしが発した心の声は、確かにあたし自身の声ではあるけれど、紡がれ出た想いは懍おば様の心の声だった。
『リン……、いや、夢子ちゃん、ありがとう』
あたしの心に向かってそう返した心波の目にも、やはり涙が溢れていた。
心波はわかっていたのかもしれない。
ただ、確信がなかっただけ。
溢れるほどの愛と、幸せだった時を、思い出したくなかっただけ。
それ以上の悲しみを背負ってしまったから……
『ありがとう……、ありがとう……』
心波が愛と幸せで満たされますように……
あたしは心の中で強く願った。