百地外伝~夢と希望


「なんやかや言うても、魁がいつも一番なんじゃ。

どうもわしの凧は喧嘩っぱやくていけんようじゃのう」


あたしの顔を優しく見つめながら、心波が呟いた。


……まるであたしに話しかけてるように。


あたしはちょっとびっくりして、隣りに立つ百地の顔を覗き込む。

その視線を受けて、百地が険しい面持ちで心波を見据えた。


「忍、心配するでない。

わしのリンへの愛は満たされた。

もうリンと夢子を見まごうことはない。

わしの乱心で夢子ちゃんを混乱させて悪かったのう。

ここにいるのは夢子じゃ、わかっておる」


「あたしが見た、戦争の夢は?

過去の巫女の夢は?

あたしが感じた懍おば様の気持ちは?」


思わずあたしは心波に詰め寄った。

あたしの夢は確かにあたしの一部で、感じたものにも確信があった。


「それもまた真実。

夢子、お前は確かにリンや過去の巫女達の生まれ変わりに相違ない。

じゃがのう、それと現実を混同してはならんのじゃ。

お前は未来を読む巫女。夢にとらわれることはするまいて……

それが出来るから、お前は今、夢子でいるのじゃから」


嗚呼……


漠然とした確信に辿り着いた。

あたしがあたしでいられるのは、もしかしたら、百地がいるからかもしれないって。
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