百地外伝~夢と希望

「わしも、やっと過去の囚われから解き放たれた。

これからは、わしのするべき未来に向けて邁進するのみ。

忍を一人前の忍者、『他心通の術』の使い手として独り立ちさせることがわしの使命じゃて」


そう言って、きりりと前を見据えた心波の横顔は、まるで仙人のように迷いのない透明な清清しさがただよっていた。


「忍、お前にも迷いはないな?」

「嗚呼、じっちゃん、俺にはそれしか術はないから」

「その通り、他に術はない。

『他心通の術』を極めることでしかお前の未来は開けない。

術に潰されてしまうがおちじゃ」


その言葉は文字通り、二人の苦悩、他人とは違う優れた能力を持つ者だけが持つ苦悩を物語っていた。


そして、二人のやり取りを聞くあたしは複雑な心境でいた。

それは、これから始まる心波と忍の長く苦しい修行を意味している訳で。



百地があたしから離れて、根来の山に篭ることを意味していたのだから。
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