百地外伝~夢と希望
そろそろ陽も山陰に落ちる。
真っ赤に染まった夕焼け空に、まだお爺様の赤い鳥居の凧だけが、悠然と漂っていた。
「あの凧は?」
あたしは、不思議に思っておじ様に聞いた。
「そろそろ風も止む。そうすれば自然と凧も降りてくる。日も暮れれば、みんな家に帰るさ」
時間にとらわれない、おだやかな時が流れる根来。
その懐に抱かれて、あたしは不思議な浮遊感を味わっていた。
何物にも囚われず、
ただ、漂う。
あの凧のように、どこまでも自由に、自然に。
でも、何処かへ飛んで消えるわけじゃない。
しっかりと繋がれ、あくまで自由に飛ぶ。
そう、あの凧のように、あたしは根来に繋がれているのだ。