百地外伝~夢と希望
公園には百地が既に待っていた。
「夢子、そんなに急がなくてもいいのに、なんなら迎えに行ったのに」
ううん、それじゃ意味がない。
あたしは大きく頭を横に振った。
あたしが渡しにこなくちゃ意味がない。
あたしは、吐く息白く、心臓の高鳴りもそのままに、勢いでケーキの箱を百地に差し出した。
「ハッピーバレンタイン! あたし、忍が大好きだよ!」
言い終える間もなく、あたしは百地に抱きしめられた。
ケーキの箱ごと。
「ううっ、ケーキが……」
あたしの呻きは、百地の優しい言葉でかき消されてしまう。
「俺が欲しいのはケーキじゃない、夢子の気持ち。
わかったつもりで、実はわかってなかった。
夢子の口から言葉で聞くと、こんなに嬉しいものなんだ……」
「忍……」
あたしの中に、なんとも言えない安心感が広がっていった。