百地外伝~夢と希望
「じっちゃんにも言われたよ、『他心通の術』を過信しちゃいけないって。
人の偽りや、嘘の気持ちは見抜けても、穏やかな優しい気持ちや愛情は外から眺めただけじゃわからない。
はっきりと言葉になって初めて形として見えるものもある」
「言葉にしないとわからない?」
「いや、そういうことじゃなく……
言葉になると倍嬉しい。いや、十倍かな?」
「忍は、最初あたしの夢の王子様だった。
それは小さい頃から憧れた夢で……
そうじゃなく、忍が好きなの。
忍は確かにあたしの対の者で、心と心が繋がってる安心感があった。
でも、それだけじゃないの。
忍が忍だから、あたしにとって特別なの」
「俺は夢子のそういう真っ直ぐな気持ちや、仕草や匂いや、柔らかさ、全てを含めて夢子が好きなんだ。
夢子が俺の対の者で、夢子を守るのが俺の使命であるわけだけど、それだけじゃない、夢子が夢子であるから、俺にとって特別なんだ」
「言葉で確かめるって、大切なことなんだね」
「そうだよ、じっちゃんは、リンさんがあんなことになって、最後、言葉でリンさんの愛を確かめることができなかった。
それが何十年もじっちゃんを苦しめてきたんだ」
百地の熱い息を頭に感じた。