百地外伝~夢と希望
「だから、俺たちは、同じ過ちを繰り返さちゃいけない。
夢子、よく聞いて。
もう暫くしたら、俺は修行で山に篭る。
恐らく、この春からしばらくの間。
ああ見えても、じっちゃんももう歳だ、いつポックリ逝くかもわからない。
じっちゃん自身、修行が途中で頓挫することを一番懸念してる。
中途半端は許されない。
『他心通の術』の習得には完璧が要求されるんだ。
だから、俺は少しでも早く行く、行かなきゃならない。
これは俺たちの未来のためでもある。
でも、夢子、心配しないで。
この間、俺の声が届いただろ?
俺はいつだって、お前と繋がっている。
お前が呼べば、俺は必ず答える。
それができなきゃ、修行を続ける意味もない。
あの二週間足らずで、やっとこの術だけ習得したんだ。
自然を見方につけ、意識を遠くまで飛ばす『自通念の術』を」
「嗚呼、だから、風が吹いて桜の花が開いた時、忍の声が聞こえた気がしたの?」
「そうだよ、心波は風に乗せて意識を飛ばすのが常らしい。
それが一番早いって。
俺は山で山桜の花の蕾を見ていたら、夢子を思い出した。
だから桜に頼んだ」