百地外伝~夢と希望
「まず始めに言っておく。
俺は、この春から、夢子を残してここからいなくなる」
屋上の文芸部室。
ユタと対峙して腰を降ろすと、百地は静かに話し出した。
「えっ? 何処へ」
「修行のために根来の山に篭る」
「修行って?」
「忍者の修行だ」
「だ、だって、百地くん、忍者なんて今時流行らないって……」
「俺の場合は、そういう問題じゃないんだ。
『他心通の術』を習得しないことには、俺に未来はない」
「って……」
「百地はひと……」
あたしは横から口を挟もうと身を乗り出した。
「夢子、ちょっと黙ってて」
百地にきつく睨まれて、あたしは口をつぐんだ。