百地外伝~夢と希望
三学期の終了式、鈴木先生の大きな声が教室に響いていた。
「まことに残念だが、百地くんは今日限りで、この学校を去ることになった。
和歌山で一人暮らしをしてらしたお祖父さんの具合が悪く、一緒に住むことになったんだそうだ。
百地、お前からもみんなに、何か一言」
先生の言葉に、みんなの視線が一斉にあたしに集まった。
翔が後ろから、あたしの背中にそっと手を当てる。
そして、その視線はそのまま立ち上がった百地に……
百地はそのままズンズンと前に進み、教室の前に立った。
改めて、前に立つ百地をマジマジと見つめた。
一年前とは随分、雰囲気が違う。
背も伸び、顔つきも大人びて、男らしくなった。
あたしの、愛しい王子様。
「短い間でしたが、みんなと学べて楽しい学校生活が送れました。
和歌山の学校でも新しい生活に早く慣れるよう頑張ります」
そう言って、百地は大きく頭を下げた。
そして、顔を上げるなり、もう一言。
「恐らく、数年後、俺はまたここに戻って来る。
それまで、俺の夢子をよろしくっ!」
教室中に歓声があがった。
「お前何様だ!」とか、
「まかせとけっ」とか、
「そりゃ無理だろっ」とか……
嗚呼、とうとうお別れなんだね、百地忍……
あたしの、愛しい王子様。
でも、あたし達の未来はこれから。
遠く離れていても、二人の心はひとつ。
だから、寂しくないよ……
そう、これからが
夢と希望のはじまりなのだから……
<完>