百地外伝~夢と希望
「藤林、どうした?
もう喧嘩か?
忍びが感情を相手に見せるとは、まだまだお前も修行が足りんな」
鈴木先生の太い声が、翔に向かった。
翔はその声に我に返ると、『ふぅっ』っと大きく深呼吸した。
「確かに、修行が足りないな……」
そう小さく呟いたのが、あたしには聞こえたけど。
「百地、悪い、夢子のためにはナイトが多い方がいい、たのむわ……」
机を叩いた手をきつく握り締め、翔が百地に向かって吐き出した言葉に、耳を疑った。
(翔、何言ってんのさぁ?)
「お前、やっぱ、変な奴だな」
「普通じゃないのは、確かだな。
夢子のことになると、殊更な……」
翔と百地が交わすやり取りを、唖然として眺めてた。
当のあたしは完全に蚊帳の外。
二人の間にどんな変化があったのか?
現実に起こっている出来事に関して、あたしは無知だ。