百地外伝~夢と希望

中学の正門には『第80回入学式』の看板。

へぇ~、この学校伝統あるんだ、って思った。

人気のまだない校舎へと、翔に手を引かれて走る。


「夢子、一番乗りだね!」


校舎入口前に貼り出された組み分け表を目の前にして、翔が得意そうに笑った。


「クラス一緒だといいなぁ~」


あたしは不安な気持ちで1組から順に名前を追った。


「あっ、あった! 1組、一緒だぁ!」


二人して顔見合わせて手を取り合って喜んだ。

だって、人見知りのあたしは、翔がいないと友達も作れない。

自分でも情けないと思うけど、いつも翔に助けられてばっかりなんだ。


「これからもヨロシクお願いします!」


あたしは、ちょぴり神妙な気持ちになって、翔に向かいペコリと大きく頭を下げた。


「こちらこそ、ヨロシク」


翔もペコリと頭を下げる。


「同じ小学校の奴もいるかな?」


そんな風に言葉を繋げて、翔はあたしの気持ちを上手くかわす。

その目は再び組み分け表へと戻された。


「おっ、いるいる、佐藤に林……あれ?」

「どうしたの、翔?」

「こいつ……」


翔の指差した名前に目をやった。


「ももちしのぶ?」

「俺達の村の奴かな?」


百地なんて名前、ここらではめったにお目にかからない。

根来には一杯いるけどね。
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