百地外伝~夢と希望
「ねぇ、高橋君、やっぱり、文芸部入るの?」
あたしは隣りを歩く、満足気な高橋君に恐る恐る聞いてみた。
「僕は始めからそのつもりだから。
田中さんは?
あの部室と、部員三人って聞いて、もしかして迷ってる?」
「なんか、あたし、続けてく自信がね、湧いてこないっていうか……」
園部先輩にも、高橋君にも振り回される気がして怖いっていうか……
「あの園部先輩、推理小説家の『園部小太郎』先生の娘なんだ。
僕、先生の〈探偵村瀬の事件簿〉の大ファンでさ、だから先生にお近づきになる為にも、文芸部入るよ。
それにあの園部先輩も観察し甲斐がありそうだし……」
「はぁ、あなた大物になるわぁ。
私は一晩よぉ~く考えて決めることにする」
「じゃ、僕は君が入部しない方に、購買部のチョコパン一個賭けるよ」
「何それ?」
「購買のチョコパン、絶品って噂だよ。
君、チョコパン好きだろ?」
「え、えっ、まぁ、それなりに……」
「だから、君が入部したら、僕の負けってことで君がチョコパンをゲットする」
「高橋君、もしかして、あたしをチョコパンで釣ってるつもり?」
「別に?
僕、君が入部すると思ってるから、まぁ、そのお祝いかな」
「はぁ?」
なんか、あたし、どっと疲れちゃった。