百地外伝~夢と希望
「でも、その部長の園部さん、推理小説家の『園部小太郎』の娘なんだろ?」
またまた不思議発言。
百地君、何であんたがそのこと知ってるの?
驚くあたしの後ろから、
「百地君、良く知ってるね。
その通り。僕、〈探偵村瀬の事件簿〉のファンなんだ」
と、嬉しそうな声が聞こえてきて。
確かに、高橋君が知ってくらいだもの、この話は結構有名な話なのかもしれないと思い至る。
「あっ、俺も、奇遇だな」
「なんか、趣味が合いそうだね、僕達って」
高橋君はそう言って、百地に笑顔で応えて。
どんだけ、推理小説が好きなのかな? 変な奴!
ってあたしは単純にそう思ったけど。
「あいつの頭ん中、半分くらい、推理小説のことで埋まってんぞ。
ネタにされないよう、気を付けないとな」
前に向き直った百地があたしにそっと囁いた。
どうやらあの一言で、百地は高橋君を手懐けたつもりらしい。
「さぁ、これから教科書配るぞぉ。
副読本併せて全部で十三冊だ。貰ったら、すぐ名前書けぇ。
その後、時間割りの見方を説明するぅ」
その時、教室に佐藤先生の大きな声が、あたしの頭の上を素通りした。
あたしの心は上の空。
だって、次に百地が何をするか、何を言うか、気になり過ぎるだもん。