百地外伝~夢と希望
その次に出たのは、悲鳴に近い叫び。
「翔のばかぁ~」
そんな恥ずかしいこと、あたしに断りもなく決めちゃうなんて。
席が隣りってだけで、こんなにあたし困惑してるのに!
あたしの気持ちもお構いないしに、いくら翔だって……
あたし、思わず走り出した。
あたしだって、訳わかんないよ!
「夢子! 危ない! 止まれ!」
いつの間にか溢れてきた涙で前が見えない。
あたしは、後ろから追いかけてくる翔の声の意味も分からない。
気がついたら、横断歩道の直前で誰かに抱きとめられてた。
「はぁ、夢子、赤信号だよ、見えないのかぁ」
直ぐに息を切らした翔が追いついた。
「百地、助かった。
危機一髪だった。
夢子は動揺すると前後の見境いなくなっから」
(えっ、百地?)
恐る恐る顔を上げて驚いた。
あたしを抱きとめたのは、他でもない百地忍だったのだ。