百地外伝~夢と希望

「おはようございます」

声のする方に目をやると、いつの間にか組み分け表の横にしつらえられた受付に女の人が立っていた。

門からはチラホラと両親に付き添われた新入生の姿が見えてきて。

「クラスはこちらの組み分け表をご覧ください」

受付前には小さな列ができつつあった。

「夢子、受付済ましちゃお」

翔に腕をつかまれて、列の後ろに並んだ。

あたし達の両親は今日の入学式には来ない。

あたしのママは仕事優先なの。

正規職員じゃないママには、有給休暇ってやつがちょっとしかないんだって。

おまけに給料が時給だから、休めばその分収入が減る。

我が家は母子家庭だからね、それはちょっと困る訳。

翔んちは、美容院。

客商売だから、定休以外は休まない。

それは社会のルールってものなんだって。

小学校入学の時は流石に子供だけじゃって、翔のお母様が仕事休んで付いて来てくださったけど。

入学式が終わると『予約のお客様の時間だわっ!』って、慌てて帰って行く後ろ姿を見て、子供心にも申し訳なかったなって遠慮する気持ちが芽生えた。

二人で出来ることは二人でしようって、翔と決めたの。


だって翔がいれば、あたし何にも怖くないし、何でもできるもの。
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