百地外伝~夢と希望

あたしは翔に向かって大きく手を振った。

翔は直ぐにあたし達に気付いて、こっちへ向かって走ってきた。


「百地、ナイト役ご苦労!

お前、ちょっとは信用できる奴だな」

「当たり前だろ、男に二言はない」

「ハハ、まだ一日目だからな」

「男に二言はないって言ってるだろ、信用しろよ」

「夢子? 文芸部は?」

翔が心配そうにあたしを見る。

「うん、入ることにした」

「そっか、頑張ってな。

じゃ、俺、あと二周あるから……」

って、翔は走っていった。

「信用、されてるんだ」

「何?」

「俺も早く信用されるようにならないとな」

「はぁ?」

「翔はお前に文芸部に入る理由とか、聞かなかっただろ?」

「まぁ、そうだね」

「それが信用されてるってこと」

「長い付き合いだからね。

信用とかそういうのとは違うかも」

「いや、翔はお前のこと、信用してる。百パーセント信じてるよ」

「そっかな、嬉しいけど、当たり前じゃない? 友達だもん」

「お前ら、凄いな」

「ハハ、何か分かんないけど、ありがと。

それって誉めてくれてるんだよね」

「まあな」

そう言って笑った百地の顔は、やっぱり翔とは違って男らしい。
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