百地外伝~夢と希望
「ありがと」
以外に気の利くユタに感謝した。
「どういたしまして。さぁ、行こう!」
あたしが急いだって、何の役にも立たないとわかってはいたけれど。
心のざわつきが気になって、無意識のうちに駆け足で階段を下りていた。
靴を履き替え、校庭に出る。
翔達一年生は、校庭脇の砂場の前で一列に整列させられ、先輩達の記録会の様子を見学していた。
その列に一人の先生が近づいていった。
「もう一度だけ言う。
藤林、記録を計れ!」
その大きな声が翔の名を呼んだ。
「嫌です。
一年全員、計るのでなければ嫌です」
「お前な、自分を何様だと思ってるんだ?
顧問の命令が聞けないなら、退部させても良いんだぞ」
「退部も命令ですか?
それがこの学校のルールですか?」
思った通りだ。
やっぱり、不条理が起こってた。
「学校は関係ない。陸上部の顧問はこの俺だ。
陸上部のことについては俺が絶対だ!」
「へっ、顧問、上等。
俺は藤林翔だ!」
翔は、そう言い捨てると、
「失礼します!」と、大きく一つ頭を下げて列を離れた。
翔の抜けた一年の列がざわついた。
「先生、俺、連れ戻してきます」
そう言って、翔の後を追ったのは百地。
翔と百地、二人が少し距離を置きながら、あたし達の方へ足早に向かってきた。